この記事の要点
- 分蜂とは、ミツバチの群れが半分に割れて旧女王が新天地へ移る、巣分かれによる繁殖の営みです
- 時期の目安は九州で3月、本州で4月ごろの、晴れた日の昼前後です
- 木や壁にできた蜂の塊は次の住処を探す一時的な待機で、多くは数時間〜1週間で自然に去ります
- 蜜を抱えた分蜂中の蜂は基本的におとなしく、刺激しなければ刺すことはほとんどありません
庭木の枝に、こぶし大よりずっと大きな蜂の塊がぶら下がっている。あるいは春先に「分蜂」という耳慣れない言葉を聞いて、駆除すべきかどうか分からず検索している。そういう状況で読まれることの多い言葉だと思います。結論から言うと、あの塊のほとんどは攻撃の準備ではなく、群れが増えすぎた巣から出て、新しい住処を探している最中の姿です。

分蜂とは、群れが半分に割れる「引っ越し」のこと
分蜂とは、ミツバチの一つの群れが二つに分かれ、旧女王蜂が働き蜂の半数前後を連れて巣を離れ、新たな営巣場所を探す現象のことです。巣分かれとも呼ばれ、ミツバチにとっては群れそのものを増やす繁殖の手段にあたります。人間の目には「大量発生」に見えても、実態は一つの巣が二つの巣になろうとしている途中経過です。
旧女王が半分を連れて出ていく
一般社団法人日本養蜂協会によると、コロニーの群勢が一定以上に確保されると、雄蜂の生産と新女王のための王台の構築が始まり、やがて新女王が誕生します。このとき、それまで巣を治めていた旧女王が、働き蜂の半数前後を伴って巣を出て、新たな営巣場所を探すことを分蜂と呼びます。旧女王は身軽になるため、飛び立つ前に産卵を控えて体重を落とすことが知られています。
残された巣には新女王が生まれる
出ていくのは旧女王とその一団だけで、元の巣そのものが空になるわけではありません。残された巣では、王台から新しい女王蜂が羽化し、そのまま群れを引き継ぎます。つまり分蜂とは、一つの巣が消えることではなく、一つの巣から新しい巣が独立していく出来事だと言えます。ニホンミツバチでもセイヨウミツバチでも、基本的な仕組みは共通しています。
なぜ半分に割れるのか——巣が満ちた合図
半分に割れる理由は、巣の中に働き蜂が増えすぎて、次の世代のための余力ができたことのサインです。群れが弱っているから逃げ出すのではなく、むしろ群れが充実した結果として起こります。
王台という新女王の部屋
王台とは、新しい女王蜂を育てるために働き蜂が作る特別な部屋のことです。日本養蜂協会の解説では、コロニーの群勢が確保されると雄蜂の生産と並行して王台の構築が始まり、そこから新女王が誕生するとされています。王台が作られ始めることは、巣の中で「そろそろ分かれる準備をする」という合図が動き出したことを意味します。
雄蜂の登場という前兆
分蜂の前兆として、巣の中に雄蜂の姿が増えることも挙げられます。雄蜂は新女王との交尾のためだけに生まれる存在で、平時の巣にはあまり多く見られません。王台の出現と雄蜂の増加がそろって観察されると、養蜂に関わる人の間では分蜂が近いサインとして受け止められています。庭先でこの段階を見分けるのは専門家でなければ難しいものですが、蜂の巣の様子が普段と違うと感じたら、こうした変化が起きている可能性があります。
分蜂の時期はいつ——春の晴れた昼前後
分蜂は一年中起こるわけではなく、主に春に集中します。時期には地域差があり、暖かい地域ほど早く始まります。
九州は3月、本州は4月ごろという目安
分蜂の時期は、九州では3月ごろ、本州では4月ごろが一つの目安とされています。これは気温の上がり方の違いによるもので、南から順に分蜂の季節が始まっていく形になります。同じ日本国内でも、地域によって「分蜂の季節」と感じる時期にはずれがあることを踏まえておくと、突然の遭遇にも心構えができます。
気温と時間帯の条件
分蜂は気温が上がり、晴れて風が穏やかな日の昼前後に起こりやすいとされています。雨の日や気温の低い日には活動が鈍るため、天候が回復した直後にまとまって分蜂が起こることも珍しくありません。もし庭先で急に蜂の羽音が増えたと感じたら、まずは天候と時間帯を確認してみると、状況を落ち着いて捉えやすくなります。
木や壁にできた蜂の塊は何をしている
壁にできた蜂の塊も、次の住処を探す一時的な姿
木の枝や建物の壁面にできる蜂の塊は、巣を作っている最中ではなく、次の住処が見つかるまでの一時的な待機の姿です。
次の住処を探す待機の姿
日本養蜂協会の解説によれば、分蜂した群れは営巣先がすぐに見つからない場合、公園の木や建物の壁などに一時的にとどまるとされています。塊の中心には旧女王がおり、働き蜂たちがその周りを取り囲むようにして守っています。この間、偵察役の働き蜂が周辺を飛び回り、樹洞や屋根裏といった適した営巣場所を探しています。塊そのものは「巣」ではなく、いわば旅の途中の休憩場所です。
数時間〜1週間で去ることが多い
大分県の畜産技術室の案内では、分蜂中の蜂の塊は数時間から1週間程度で自然に飛び去るとされています。適した営巣場所が早く見つかれば数時間で移動しますし、条件に合う場所がなかなか見つからなければ数日間その場にとどまることもあります。いずれにしても、いずれは自分たちの意思でその場を離れていく一時的な現象だという点は共通しています。
見つけたらどうする——まず刺激しない、そして相談
蜂の塊を見つけたときにまず大切なのは、近づいて刺激しないことです。駆除を急ぐ前に、行政の窓口に相談するという選択肢があります。
蜜を抱えた蜂は基本おとなしい
大分県畜産技術室によると、分蜂中の蜂は巣から出る前に蜜を蓄えているため、不用意に刺激したりつぶしたりしない限り、刺すことはほとんどないとされています。攻撃的になる大きな理由の一つは巣や幼虫を守る防衛本能ですが、分蜂中の群れにはまだ守るべき巣がありません。とはいえ、棒でつついたり水をかけたりといった刺激は避けたほうがよいことに変わりはありません。
駆除の前に自治体の畜産担当へ
大分県の案内では、駆除ではなく「そっと見守る」ことが推奨されており、判断に迷う場合は都道府県の畜産担当部署へ相談するよう案内されています。自治体によっては専門の窓口や連絡先を用意している場合もあるため、慌てて自己判断で薬剤を使ったり業者を手配したりする前に、まずは自治体に状況を伝えてみることをお勧めします。京都で養蜂を準備している六角門ですとしても、こうした行政の見解を踏まえた見守りの姿勢を大切にしたいと考えています。
「保護したい」と思ったら知っておくこと
蜂の塊を見て「せっかくだから飼ってみたい」と思う人もいるかもしれませんが、ミツバチの飼育には法律上の届出義務があることを知っておく必要があります。
みつばち飼育届という制度
農林水産省畜産局畜産振興課の案内によると、養蜂振興法により、ミツバチを飼育するすべての者は、毎年1月末までに飼育の届出(蜂群飼育届)を住所地の都道府県に提出する義務があります。届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした場合には、10万円以下の過料が定められています。分蜂群を捕まえて自宅で飼い始めることは、趣味の範囲であってもこの制度の対象になるということです。
私たちも準備段階で調べていること
六角門では、京都で養蜂を軸にした準備を進めていますが、現時点ではまだミツバチを迎える前の段階にあります。分蜂のように群れが動く場面に立ち会う機会もこれからのことですが、養蜂振興法や蜂群飼育届のような制度面は、実際に始める前に確かめておきたい事柄の一つとして調べているところです。生き物を迎えるということは、可愛がる以前に、制度の中で責任を持つということでもあると感じています。
よくある質問
Q:分蜂した蜂の塊は放っておいても大丈夫ですか 大分県畜産技術室の案内によれば、分蜂中の蜂の塊は数時間から1週間程度で自然に飛び去るとされています。蜜を蓄えているため防衛的ではなく、刺激したりつぶしたりしない限り刺すことはほとんどないとも案内されており、駆除を急がず見守ることが推奨されています。判断に迷う場合は、自治体の畜産担当部署に相談するとよいでしょう。
Q:分蜂の時期はいつごろですか 分蜂の時期は地域によって差があり、九州では3月ごろ、本州では4月ごろが目安とされています。気温が上がり、晴れて風の穏やかな日の昼前後に起こりやすいのも特徴です。同じ「春」でも地域ごとに時期がずれることを踏まえておくと、突然の遭遇にも落ち着いて対応しやすくなります。
Q:分蜂中のミツバチは刺しますか 大分県畜産技術室によると、分蜂中の蜂は蜜を蓄えて移動している状態で、まだ守るべき巣を持たないため防衛的になりにくく、不用意に刺激したりつぶしたりしない限り刺すことはほとんどないとされています。とはいえ近づきすぎたり手で払ったりする行為は避け、静かにその場を離れるのが基本です。
六角門は現在、京都で養蜂を軸にした健康ブランドの準備を進めている段階で、まだミツバチを迎える前です。巣箱も採蜜も、これから確かめていくことばかりですが、分蜂のような群れの営みや養蜂振興法のような制度についても、一つずつ調べながら形にしていきたいと考えています。