この記事の要点
- ニホンミツバチは在来種Apis cerana japonica、セイヨウミツバチは1877年に導入された外来種Apis melliferaです
- 採蜜量はセイヨウがニホンの平均5〜10倍多いと日本在来種みつばちの会は伝えています
- 国産はちみつの自給率は約6%で、スーパーに並ぶ大半は輸入由来のセイヨウミツバチのはちみつです
- どちらを飼う場合も、養蜂振興法に基づき毎年1月末までに都道府県知事への飼育届が必要です
庭先や公園で見かける蜂が「ニホンミツバチ」なのか「セイヨウミツバチ」なのか、実はほとんどの人が見分けられません。スーパーのはちみつのラベルにも、どちらの蜂が集めたものかは書かれていないことが多いものです。けれどこの二種は、見た目も暮らし方もはちみつの性質も、驚くほど違います。

そもそも別の種——在来種と外来種という出発点
ニホンミツバチとセイヨウミツバチは、同じ「ミツバチ」という呼び名でくくられていても、生物学的には別の種です。一般社団法人 日本在来種みつばちの会によると、ニホンミツバチは日本列島に古くから生息してきた在来種、セイヨウミツバチは明治期に日本へ導入された外来種とされています。
日本にもとからいたニホンミツバチ
ニホンミツバチとは、学名Apis cerana japonicaで呼ばれる在来種です。トウヨウミツバチという東アジア広域に分布する種の亜種にあたり、日本列島の気候や植生、そしてオオスズメバチのような天敵の存在を前提に、長い時間をかけて生態を形づくってきました。人が持ち込んだ蜂ではなく、もとからこの土地にいた蜂だという点が、セイヨウミツバチとの根本的な違いです。
明治に海を渡ってきたセイヨウミツバチ
セイヨウミツバチとは、学名Apis melliferaで呼ばれる外来種です。日本在来種みつばちの会の記録では、1877年(明治10年)に日本へ導入されたとされています。ヨーロッパを起源とし、採蜜量の多さから世界各地で養蜂用に飼育が広がってきた種で、現在の日本の養蜂業でも中心的な役割を担っています。導入からまだ150年に満たないという事実は、ニホンミツバチの在来としての歴史の長さと対照的です。
見た目で見分ける——大きさ、色、しま模様
大きさと体色を見比べると、種類の違いが分かりやすい
ニホンミツバチとセイヨウミツバチは、並べて見るとサイズと体色の違いがはっきり分かります。ニホンミツバチは小さめで黒っぽく、セイヨウミツバチはひと回り大きく明るい色をしています。
ニホンは小さめで黒っぽい、セイヨウは明るい
ニホンミツバチは体長がやや小さく、全体の色味も黒に近い印象です。腹部のしま模様はセイヨウミツバチに比べて地味で、光の当たり方によっては黒一色に見えることもあります。一方セイヨウミツバチは体がひと回り大きく、腹部にオレンジがかった黄色の縞がはっきりと入り、全体に明るく見えます。散歩中や庭先で蜂を見かけたとき、「小さくて黒っぽい」か「大きくて縞が鮮やか」かというのは、非専門の人でも比較的つかみやすい着眼点です。
羽の支脈という細かな違い
もう少し専門的な見分け方として、翅(はね)の支脈(しみゃく)、つまり翅の中を走る細い脈の分岐パターンの違いが挙げられます。これは近距離でよく観察しないと分かりにくい特徴で、日常的な見分け方としては体の大きさと色合いのほうが実用的です。専門家や愛好家の間では、この支脈の違いが種を確定させる際の判断材料の一つとして使われています。
暮らしぶりが違う——群れの規模と飛ぶ範囲
ニホンミツバチとセイヨウミツバチは、一つの群れの大きさも、蜜を集めに飛ぶ範囲も大きく異なります。日本在来種みつばちの会の資料では、セイヨウミツバチのほうが群れも行動範囲も大きいとされています。
群れの大きさの差
セイヨウミツバチの1群あたりの規模はおよそ2万〜4万匹とされ、ニホンミツバチはおよそ5千〜2万匹とされています。つまり群れの規模で見ると、セイヨウミツバチのほうが数倍大きな集団を形成する傾向があります。この群れの規模の差は、後述する採蜜量の差にもつながっていく数字です。
蜜を集めに行く距離
飛行半径についても差があり、セイヨウミツバチはおよそ3〜4km、ニホンミツバチはおよそ1〜2kmとされています。セイヨウミツバチのほうが広い範囲まで蜜源を探しに飛べる計算になり、群れの規模の大きさと合わせて、より多くの蜜を集められる体制になっていると考えられます。ニホンミツバチは行動範囲が比較的狭い分、周辺の植生に生態が左右されやすい蜂だとも言えます。
オオスズメバチとどう戦うか——熱殺蜂球という在来の知恵
数百匹が団子状に集まり、熱でスズメバチに対抗する
ニホンミツバチには、天敵のオオスズメバチに対抗する独自の防衛行動が知られています。それが熱殺蜂球(ねつさつほうきゅう)と呼ばれるものです。
団子状に囲んで熱で対抗する
熱殺蜂球とは、巣に侵入したオオスズメバチを数百匹のニホンミツバチが取り囲み、団子状の塊(蜂球)を作って発熱し、熱でスズメバチを弱らせて排除する行動のことです。日本在来種みつばちの会によると、この蜂球の内部温度は約48℃まで上昇するとされています。オオスズメバチと長い年月をともに過ごしてきた在来種だからこそ獲得した、進化上の対抗手段だと考えられています。
セイヨウが不利になる理由
セイヨウミツバチは、この熱殺蜂球のような集団的な対抗行動を持たないとされ、オオスズメバチの襲撃に対して防御が弱いとされています。ヨーロッパを起源とするセイヨウミツバチは、進化の過程でオオスズメバチのような天敵と接する機会がなく、対抗手段を獲得する必要がなかったためだと考えられます。日本国内で養蜂を営む上では、オオスズメバチ対策がセイヨウミツバチの群れにとって重要な課題の一つとされています。
はちみつはどう違う——百花蜜と単花蜜、採蜜量の差
ニホンミツバチとセイヨウミツバチのはちみつは、集め方も採れる量も違います。ニホンミツバチのはちみつは百花蜜(ひゃっかみつ)になりやすく、セイヨウミツバチは単花蜜(たんかみつ)として管理されることが多いという傾向があります。
ニホンの百花蜜、セイヨウの単花蜜
百花蜜とは、特定の花に限定せず、その季節にその土地で咲くさまざまな花から集められたはちみつのことです。ニホンミツバチは行動範囲が狭く、周辺の多様な花を巡って蜜を集める性質があるため、結果として百花蜜になりやすいとされています。一方、養蜂の現場では、セイヨウミツバチの群れを特定の花の咲く場所に移動させて飼育する方法がとられることがあり、レンゲやアカシアといった単一の花に由来する単花蜜として採蜜・管理されることが多くなります。どちらが優れているという話ではなく、集め方の違いが、はちみつの個性の違いとして表れていると言えます。
採れる量が大きく違う
日本在来種みつばちの会の資料では、1群あたりの採蜜量は平均でセイヨウミツバチがニホンミツバチの5〜10倍多いとされています。群れの規模と飛行範囲の差がそのまま採蜜量の差につながっている形です。ニホンミツバチのはちみつが少量しか流通しないと言われる背景には、この採蜜量の差があります。
1歳未満には与えない——大切な注意
はちみつの種類にかかわらず、消費者庁は生後1歳未満の乳児にはちみつを与えないよう呼びかけています。はちみつにはボツリヌス菌の芽胞が混入していることがあり、乳児の腸内で増殖して乳児ボツリヌス症を引き起こすおそれがあるためです。この芽胞は100℃で数分加熱しても死滅しないことがあるとされ、加熱調理をしても安全とは限りません。ニホンミツバチの百花蜜であってもセイヨウミツバチの単花蜜であっても、この注意は変わりません。
スーパーのはちみつはどちら?——国産と輸入、自給率の話
スーパーの棚に並ぶはちみつの多くは、輸入されたセイヨウミツバチのはちみつです。農林水産省の資料によると、国産はちみつの自給率は約6%にとどまり、国内で流通するはちみつの9割以上を輸入が占めています。
流通の9割以上は輸入
農林水産省の資料では、国内で流通するはちみつの9割以上が輸入品で、輸入相手として最も多いのは中国産だとされています。国内生産量はおよそ2,600トン規模とされ、国内で消費されるはちみつ全体からすればごく一部にとどまります。輸入されるはちみつは基本的にセイヨウミツバチによるものであり、スーパーで手に取るはちみつの多くはセイヨウミツバチ由来だと考えて差し支えありません。
国産が貴重とされる背景
農林水産省の資料によれば、昭和60年当時の自給率は約20%あったものが、現在では約6%まで低下してきたとされています。国産はちみつ、とりわけニホンミツバチによる百花蜜が貴重とされる背景には、こうした自給率の低下と、前述の採蜜量の少なさという二つの要因が重なっています。希少だからといって品質が一律に優れているという意味ではなく、単純に流通量が少ないという事実として捉えるのが実態に近いと考えられます。
飼うとなると何が違う——逃去のしやすさと飼育届
ニホンミツバチとセイヨウミツバチは、飼育のしやすさという点でも違いがあります。ニホンミツバチには逃去性(とうきょせい)という特徴があり、養蜂の難しさの一因とされています。
気に入らないと巣を捨てる逃去性
逃去性とは、巣の環境が気に入らなくなったり、外敵の侵入や餌不足などの要因が重なったりすると、群れごと巣を捨てて別の場所へ移り住んでしまう性質のことです。ニホンミツバチはこの逃去性が強いとされ、せっかく飼育していた群れがある日突然いなくなってしまうことがあります。セイヨウミツバチは比較的定住性が高く、養蜂家が管理しやすい種とされているため、日本国内の商業養蜂の多くはセイヨウミツバチによって支えられています。なお、分蜂(ぶんぽう)は群れが増えて新しい女王とともに一部が巣を出ていく増殖行動で、群れそのものが不満から巣を放棄する逃去とは区別される現象です。
どちらを飼うにも飼育届が要る
ニホンミツバチであってもセイヨウミツバチであっても、飼育を始める際には法律上の手続きが必要です。農林水産省によると、改正養蜂振興法により、ミツバチを飼育する者は原則として毎年1月末までに、住所地の都道府県知事へ飼育届を提出する義務があるとされています。これは蜜源をめぐる養蜂家同士のトラブルを防いだり、病気のまん延を防いだりすることが目的とされる制度です。趣味で少数の巣箱を置く場合であっても、この届出の対象になり得る点は見落とされがちです。
はちみつを口にするときにも、瓶の中身が結晶化して白く固まったのは結晶化という自然現象だと知っておくと、無駄に不安になることもなくなります。
よくある質問
Q:ニホンミツバチとセイヨウミツバチは見た目でどう見分けますか ニホンミツバチは体が小さめで、全体に黒っぽい色をしています。セイヨウミツバチはひと回り大きく、腹部にオレンジがかった黄色の縞がはっきり入り、明るい印象を受けます。日本在来種みつばちの会の資料でも、この体の大きさと色の違いが基本的な見分け方として挙げられています。より厳密に区別するには翅の支脈の分岐パターンを見る方法もありますが、日常的にはまず大きさと色合いを見るのが実用的です。
Q:スーパーのはちみつはどちらのミツバチのものですか 大半はセイヨウミツバチによるはちみつです。農林水産省の資料によると、国産はちみつの自給率は約6%にとどまり、国内流通の9割以上を輸入が占めています。輸入されるはちみつは基本的にセイヨウミツバチによるものであるため、スーパーで見かけるはちみつの多くはセイヨウミツバチ由来だと考えられます。
Q:ニホンミツバチのはちみつが少なく貴重なのはなぜですか 主な理由は二つあります。一つは、日本在来種みつばちの会の資料にあるように、1群あたりの採蜜量が平均でセイヨウミツバチの5〜10分の1程度と少ないことです。もう一つは、ニホンミツバチには逃去性という、環境が気に入らないと群れごと巣を捨ててしまう性質があり、安定した飼育そのものが難しいことです。この二つが重なって、流通量の少なさにつながっていると考えられます。
六角門は、京都で養蜂を軸にした健康ブランドとして準備を進めています。京都で養蜂を準備している六角門についてにも記したとおり、まだ蜂を迎える前の段階で、今回のような在来種と外来種の違いも、その準備のなかで調べてきたことの一つです。これから蜂と向き合っていく上で、確かめておきたいことはまだ多く残っています。