この記事の要点
- 純粋・加糖・精製の3区分は、業界の公正競争規約が定める制度上の別物です。
- 「純粋」を名乗れるのは、はちみつ類以外の混入がなく「純粋」「Pure」の文言のみを使う場合です。
- 令和元年5月の規約改正で、加糖はちみつと精製はちみつは「はちみつ類」の定義から外れました。
- 店頭では名称欄・原材料名欄・採蜜国と公正マークの3点をこの順に確認すれば区分が分かります。
- 加糖・精製は偽物ではなく、糖類を加えたり色や香りを取り除いたりした別の食品です。
同じ「はちみつ」という棚に、値段がまったく違う瓶が並んでいるのを見たことがある人は多いと思います。片方には「純粋」、もう片方には「加糖」や「精製」と書かれていて、その差が何を意味するのか、パッケージだけではなかなか判断がつきません。この価格差は品質の優劣ではなく、業界のルールが決めた区分の違いによるものです。

はちみつのラベルは、業界の公正競争規約が決めている
「純粋」「加糖」「精製」という表示は、感覚的な言葉ではなく、景品表示法にもとづく業界ルールの用語です。このルールを知らないまま棚を見ても、区分の意味は伝わりません。
昭和44年から続く「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」
はちみつの表示は、「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」という業界の自主ルールによって定められています。この規約は昭和44年に制定され、その後も改正を重ねながら現在まで運用されています。景品表示法にもとづく制度であるため、実際に養蜂やはちみつの調製に携わるかどうかにかかわらず、表示に関わるすべての事業者が対象になります。
誰がどう運用しているのか——全国はちみつ公正取引協議会
この規約を運用しているのが、全国はちみつ公正取引協議会です。消費者庁の認定を受けたこの協議会が、規約の内容を定め、加盟事業者の表示を管理しています。国産のはちみつを扱う事業者は日本養蜂協会とも関わりが深く、セイヨウミツバチを中心とした国内養蜂の現場とも地続きの制度です。ラベルの片隅にある公正マークは、この協議会のルールに沿って表示されている印です。
「純粋」を名乗れる条件——純粋・Pure以外は使えない
純粋はちみつとは、はちみつ類以外のものが混入しておらず、表示に「純粋」または「Pure」の文言だけを用いたものです。それ以外の言い回しは、たとえ似た意味に見えても純粋表示としては認められません。
はちみつ類以外のものが混入していないこと
規約上、純粋表示ができるのは、はちみつ類以外のものが混じっていない場合に限られます。糖類や添加物が加わった時点で、純粋という言葉は使えなくなります。この条件が満たされているかどうかは、次章で触れる組成基準の数値によっても裏づけられています。
「天然」「完熟」がラベルに書けない理由
規約が定めているのは「純粋」「Pure」という文言だけであり、それ以外の表現は純粋はちみつの表示としては想定されていません。同じ棚にある単花蜜と百花蜜の呼び分けも、この規約に沿った表示ルールのひとつで、単花蜜と百花蜜の違いと表示ルールで詳しく扱っています。
加糖はちみつと精製はちみつ——何を加え、何を取り除いたものか
加糖はちみつと精製はちみつは、純粋はちみつとは異なる工程を経た別の食品です。どちらもはちみつを原料にしていますが、規約上の位置づけは純粋はちみつと明確に分かれています。
加糖はちみつ——異性化液糖などの糖類を加えたもの
加糖はちみつとは、はちみつに異性化液糖や果糖ブドウ糖液糖などの糖類を加えたものです。原材料名欄に「はちみつ」以外の語が並ぶのはこのためです。甘味料としての位置づけが近く、はちみつと他の甘味料との違いは砂糖・はちみつ・みりん・甘酒の違いでも整理しています。
精製はちみつ——色と香りを取り除いた甘味料
精製はちみつとは、はちみつが本来持つ色や香り、風味成分を取り除いて仕上げた甘味料です。花の種類による香りの違いを楽しむ純粋はちみつとは、そもそもの目的が異なる食品といえます。
令和元年の規約改正で変わったこと
全国はちみつ公正取引協議会によると、令和元年5月の規約変更により、加糖はちみつと精製はちみつは「はちみつ類」の定義そのものから外れました。つまり現在の規約上、この2つは「はちみつ」の一種というより、はちみつを原料とした別カテゴリの食品として扱われています。
数値で見る「はちみつ」の組成基準
純粋はちみつとして扱われるためには、糖と水分について具体的な数値基準を満たす必要があります。感覚や見た目ではなく、成分の分析値で線引きされている点が、この規約の特徴です。
糖のものさし——果糖とブドウ糖の合計
全国はちみつ公正取引協議会の規約では、果糖とブドウ糖の合計が100gあたり60g以上、しょ糖が100gあたり5g以下と定められています。花の蜜が蜂の体内で転化され、大部分が果糖とブドウ糖になる過程を経てはじめて、この基準を満たすはちみつが出来上がります。
水分のものさし——国産だけ22%以下である理由
水分については100gあたり20g以下が基準ですが、国産のはちみつに限り22g以下とされています。この基準を大きく下回るまで蜂が蜜を濃縮し、水分を抑えることが、はちみつが長期間傷みにくい理由のひとつにもつながっています。この点ははちみつはなぜ腐らないのかでも取り上げています。
店頭でできる3ステップの確認手順
区分を見分けるために難しい知識は要りません。ラベルの決まった3か所を、決まった順番で見るだけで判断できます。
ステップ1:名称欄で区分を確かめる
まず名称欄を見ます。「はちみつ」「加糖はちみつ」「精製はちみつ」のいずれかが記載されているはずで、これが最も直接的な区分の手がかりです。
ステップ2:原材料名が「はちみつ」だけかを見る
次に原材料名欄を確認します。「はちみつ」のみが記載されていれば、それ以外の糖類は加えられていません。異性化液糖や果糖ブドウ糖液糖といった語が並んでいれば、加糖はちみつであることが分かります。
ステップ3:採蜜国と公正マークを確かめる
最後に採蜜国の表示と公正マークを見ます。採蜜国は原料の産地を示し、公正マークは全国はちみつ公正取引協議会のルールに沿った表示であることの印です。この3点を名称欄→原材料名欄→採蜜国の順で見れば、値段の差が何によるものかが具体的に分かります。
よくある誤解を3つほどく
白い結晶化は自然現象で、混ぜ物の印ではない
はちみつの表示をめぐっては、規約の内容とは異なる思い込みが広まりやすい面があります。ここでは代表的な3つを整理します。
白く固まるのは偽物の印ではない
はちみつが白く固まる結晶化は、成分の性質によって起こる自然な現象であり、混ぜ物の証拠ではありません。仕組みについてははちみつが白く固まる結晶化のしくみにまとめています。
「純粋」と「国産」は別の話——自給率7%程度という現実
純粋はちみつという表示は原料の混入がないことを示すものであり、産地が国内かどうかとは別の話です。日本養蜂協会によると、国内で流通するはちみつ約41千トンに対し国産の生産量は約2.8千トンで、自給率は7%程度にとどまります。飼育戸数も昭和60年の9,499戸から平成17年には4,790戸へと減少しており、店頭に並ぶ純粋はちみつの多くが輸入原料であること自体は珍しくありません。国内の蜜源をめぐる状況は日本で蜜源が減っている話でも触れています。
加糖・精製は「偽物」ではなく用途の違う別の食品
加糖はちみつと精製はちみつは、規約の定義上「はちみつ類」からは外れていますが、違法な粗悪品というわけではありません。糖類を加えたり風味を取り除いたりした、用途の異なる別の食品として流通しています。
どの区分を選んでも変わらない、ひとつの注意点
1歳未満の乳児にははちみつを与えない
純粋・加糖・精製のどれを選んでも共通して守るべき注意点があります。1歳未満の乳児にはちみつを与えないことです。
1歳未満の赤ちゃんには与えない——乳児ボツリヌス症
消費者庁は、1歳未満の乳児は腸内細菌の環境が整っておらず、はちみつに含まれることがあるボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を作ることがあると注意を呼びかけています。この菌の芽胞は100度で数分間加熱しても生き残ることがあり、加熱では防げないとされています。1歳を過ぎればこの注意を特に避ける必要はないとも説明されています。区分にかかわらず、乳児への対応だけは一律に守るべき事項です。詳しくは1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えてはいけない理由にまとめています。
よくある質問
Q:純粋はちみつと書いてあれば、混ぜ物は本当に入っていないのですか? 規約上、純粋表示ができるのははちみつ類以外のものが混入していない場合に限られます。この条件を満たしているかどうかは、公正マークの有無と原材料名欄に「はちみつ」のみが記載されているかで確認できます。
Q:加糖はちみつは体に悪いのですか? 安全性や体への良し悪しの問題ではなく、糖類を加えているかどうかという定義上の違いです。加糖はちみつは異性化液糖などを加えた甘味料として、純粋はちみつとは別のカテゴリで扱われています。
Q:白く固まったはちみつは砂糖が混ぜられている証拠ですか? 結晶化は成分の性質による自然現象であり、混ぜ物の証拠ではありません。仕組みについてははちみつが白く固まる結晶化のしくみで詳しく説明しています。
六角門は、京都で養蜂を軸にした健康ブランドを準備しています。まだ蜜蜂を迎える前の段階ですが、こうした表示のルールや組成基準を調べることも、準備の一部として進めています。これから確かめていきたいことは、まだ数多く残っています。